2014年3月11日火曜日

通行証

医者で読んだ「家庭画報」
美容院で読んだ「ELLE」

いずれもコラムになかなか読み応えがあった。

「家庭画報」は
こころとからだといのちの科学。
加々美幸子さんと専門家との対談。
お相手は、“生命誌研究者”との肩書きをお持ちの中村桂子さんである。

史ではなく、誌。

なんだろう雑誌の代表という意味かなと思ったら
<人間も含めてのさまざまな生きものたちの
「生きている」様子を見つめ、
そこから「どう生きるか」を探す新しい知>

とのこと。

中村さんは大阪にあるJT生命誌研究館の館長をしておられる。

http://www.brh.co.jp/

今回のテーマは出生前診断であった。

この世に産まれるとは
「あなたは生まれることができますよ」
と通行証をくださったことだと中村さんは言う。

遺伝子が完璧な人など一人もいない。

そして生き物には正常も異常もない。

「生きるものは、わからないことだらけ。
考えながら生きるのが人間らしさ」

診察室に呼ばれるまで
目を上下にフルスピードで動かし何度も
そのくだりを呼んだ。

また我が子のことで恐縮だが
以前にも書いたように
私は、息をすることと、寝ることと、泣くことと
お乳を飲むことしかできない赤子を前に
少し途方にくれていた。

どんなお子さんに育てたいですか、と
テレビでどこぞの芸能人に尋ねる人がいる。

どんな子って。

そのとき思い浮かんだのはただひとつ。
人がどうであれ
自分で考えられる人になればいい、ということであった。

考えることこそ、人として生まれてきた証である。
通行証をもらってここに来たのである。

そして私は、彼に教えられる生きる技など
何もないと暗鬱たる想いがしたものだ。

ただひとつ、彼に伝えられるとしたら
それは文化、しかないと思った。

それもまた
能足らずの親としての逃げだったのかもしれないが。




そして私もまた、通行証をもらってここにいる。

石垣りんさんの「悲しみ」という詩があって
手首を骨折した六十五才のその人は
すでにこの世にいない両親に
もらった身体をこんなにしてしまって
ごめんなさいと泣くのだ。

「今も私は子どもです。
おばあさんではありません」

この下りで、私は立ち読みして少し泣いた。







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