2013年12月28日土曜日

頼まれもしない仕事

世の仕事納めの日だが
なんだか今年はきぜわしい。

午前は文字校正を受け取り
午後は色校を受け取っての修正がある。


通りすがりのみせ。
外の黒板にメッセージを書いてある。
最近、Caféなどに多い道端ブログ的なスタイル。

「みなさんクリスマスはどのようにお過ごしでしたか。
わたしは体調を崩してしまい
チキンもケーキも食べられませんでした」

あれれ。

私も体調が悪いので過剰に心が動く。

こういう黒板って
通る人に少しでも
幸せな気分になってもらうためにあるのではないのかな。

マイナスの報告は、道端にマイナスのバイブレーションを流してしまう。


午前中、いつもより1時間早く校正を受け取る。

和やかな雰囲気。
うちは“業者さん”と呼ばれる出入りの立場なのだが
仕事の内容を信頼してくださっているのを感じる。

最初は電話で「いま“業者さん”が来ていて・・・」
と誰かに説明しているのを聞いて
距離を感じ、少々寂しかったが
今はそんなこともなくなった。

★ ★ ★

さて、体調がすぐれないので
次のところで色校を受け取り
帰ろうと思っていたら、
色校の到着が2時間ばかり遅れるという。

しかたないので
電気店でスマホの充電器を買ったり
書店で立ち読みしたり。

いつもスマホを充電しながら寝るのだが
どうもコードがちゃんと刺さっていなかったようで
朝、気づけば、バッテリーの残り、14%であった。

今日は電話の多い日なので
さすがに14%では不安だったのである。

iPodもそうだ。
よし!今日はあの曲を聞くぞ!
と意気込んだ日に限って
充電がゼロだったり
イヤフォンのイヤーマフがとれていたりする。
しかもイヤフォンをSONYのノイズキャンセリングタイプにしたものだから
イヤーマフ一つとっても汎用ではないのである。

芋洗坂を下り、親会社へ色校を受け取りに行く。
小雨が降ってきた。
六本木はビル風が冷たい。

なんのかんのとややこしい事があり
帰ったら10時だった。

明日から台湾演奏旅行というYくんは
すでに夕飯をすませていたので
蕎麦で済ます。

少し寝てまた起きだすと
デザイン修正ができましたとのメールがきていた。
午前零時である。

皆、どこまで仕事をするのだろう。

<頼まれた仕事はさっさと仕上げて、頼まれもしない仕事に着手しろ>

と言ったのは橘川幸夫さんだ。

そうだ、頼まれもしない仕事をしなくちゃな。

2013年12月27日金曜日

レコード棚の一枚

Yくんに
「ものを作る人に対して
あなたの作品は人気がないとか、
売れていないとか言うべきではないと思う」
と言われた。

ものを作る人はみんな、
自分の作品がどう受け入れられるかわからない中で
頑張っているのだから、だそうである。

私はときどき、言葉が過ぎることがある。

それは自分でも思う。

私は、普段、人様が精魂こめて作ったCDを聴き
紹介する仕事をしている。

もっと若い頃は
厳しいことを言うのが批評だなどと
それこそ、カッコつけていたこともあった。
言葉が足りなくて
人を傷つけたところもあったとは思う。

だが、アーティストをこきおろしたいなどと
意地悪な気持ちを持ったことはない。
基本、応援である。

カッコイイ!と素直に思える音楽、
カッコイイ!とあこがれてしまえるアーティストに
出会いたい。

そしてそれを皆に聞いて!聞いて!と紹介したい。

そこが基本だ。

だからなのだろうか。
同じアラン・トゥーサン・インタビューでも
S氏のはジャーナリズムだが
私のはファンのインタビューだとYくんは言った。

そうか、そうなのかもな。

それなら個人のブログと変わらないと言う人もあるだろうが
私は発した言葉によって
音楽が誰かの生活に根をおろし
やがて結びあい
大きなうねりとなり
次の次代に受け継がれてほしいと願っている。

そのために、文章をおろそかにしたくない。
言葉そのものにも力を持てるようになりたい。

また、私は一番のお客さんでいたいとも思う。

たとえばCDであれば
記事を観てお客さんは2000円なりを支払うのだ。
稚内の人もいれば、多良間島の人もいる。
ときに全国から問い合わせてでも手に入れようとするわけだ。

だからこそ、
日々の暮らしで何度でも聞けるアルバムかどうかは
判断の尺度になる。

リスニングの環境も若干は左右するのは確かだ。
アメリカで録音されたアルバムの中には
あの広大な土地で車に乗って聞けば最高だろうなぁと
思うものがよくある。

日本で満員電車に揺られながら
ヘッドフォンステレオで聞くのとは
やはり感じ方も変わってくるだろう。

でもそうしたことを差し引いても
やはり音盤をはみ出るだけの
エナジーを感じさせる音楽があるのは確かだ。

先日、憂歌団再始動を観に行ったとき
CD販売のコーナーで
ある女性ファンが感極まったように言った。

「わたし、すり切れるまで聞く!」

CDがすり切れるかどうかはわからない。

ただ、大事に、大事に、繰り返し聞くことのできる
アルバムに出会えた幸福。
そうしたアルバムを創れたアーティストの幸福。
それぞれを想った。

私は、産業としての音楽シーンにも関わっているので
1枚でも2枚でも多くのCDを買ってもらおうとすることが多い。

売らんかな、でなくとも
たくさんのアルバムを聞いてほしいと
ガイドブックを作ったりもする。

でも、この女性のうれしそうな表情を見ながら
たった一枚でいい。
日々の暮らしの中で
一生大切にしたいアルバムに出会えること。

それがどれだけ素晴らしいことかを
忘れてはいなかっただろうか。


そのアーティストにとって
歌うことが、あるいは演奏することが必然であったと思わせる
演奏に出会うと
アルバムであろうと、ライヴであろうと
震えるほどうれしい。


そういうアーティストを
あるいはアルバムに出会うチャンスを
一人でも多くの人に作れるよう
これから一所懸命やっていきたい。




2013年12月25日水曜日

イブに風邪

3連休明け。電車はすいている。

丸めたカレンダーの詰まった紙袋を提げた
背広姿の人、ちらほら。

学生はそろそろ休みなのだろう。

子どもたちも今日までか。

駅ビルの階段を下りたたところで甘い匂い。
ケーキを売っている。
あれ、そういえばイブじゃないですか。

最初の打合せ。
昔、お世話になった、しかしとても厳しかった
上司が戻ってくるときいて
「戻ってきちゃったんですか」
と、つい言ってしまう。

いくつになったら、口の利き方を覚えるのだろう。

資料を取り寄せたり、掲載や取材のお願いで
会社に電話したときに
広報担当者の応対が、
へりくだるでもなく、圧するでもなく、
無理するでなく、言葉もよどみないとき
実にクレバーであると
このうえなく感動する。

母や、OLをしている妹にも
「おねえさん、挨拶をするときアタマだけちょこんと下げるんじゃないのよ」
「早口でしゃべらないのよ」
「靴はそろえてあがるんだよ」
「お菓子を出されたらすぐ食べない!!」

などと小言を言われる。

この2人は、お華とお茶の免状も持っている。
私は何も持っていない。

やはり社会人一年生として
会社に入り
誰かに教えてもらうということは決してムダではないと思う。

電車に一時間ばかり揺られ、次の打合せへ。

少し間があったので
駅前のスーパーを大きくしたような
モールを二回り小さくしたような百貨店をのぞく。

クリスマスイブか。

これは誰にあげよう。
こっちは誰々かな。
もうこの世にいない人の顔まで浮かぶ。

想像しながら、見てまわるのは意外と楽しい。
誰かのために贈り物を選ぶという幸福。

さて打合せだ。
皆、風邪をひいていた。

風邪の人を目の前にすると
その瞬間からうつったような気がしてくる。

帰りに薬局に寄って、風邪クスリを買った。
店の人はたぶん高いほうを売りつけてきたように思う。

地下鉄でさっそく飲むが、うとうとするくらいで
寝てしまうまでいかない。

白いコートでおめかしし、スマホでLINEをチェックするおねえさん、
たぶん手持ちで一番良いバッグを持ちブーツを履いて
子どもたちにもきれいな格好をさせた母親のグループ、
プレゼントらしき小さな紙袋を下げたカップル、
ほとんどが表参道駅でおりた。

クリスマスイブなんだ。

帰ってデザイナーさん5人に校正原稿を配ると
ようやく、というか、そんな時に眠くなってきた。

Yくんが買ってきたパーティ仕様のチキンをむりやり食べて
ごろりと横になると気がつけば2時間も寝ていた。

それからボビー・ブランド、ボビー・ウォマックらが歌う
クリスマスソングの流れるラジオを聞きながら
週末〆切の原稿を少し書く。

やはり風邪のような気がする。


カスレと生誕祭

23日は、Yくんの誕生日。

25年間おつきあい、ありがとう。

発達心理学では、25が青年から成人前期になる年齢らしい。

小学校にも中学校にもほとんど行かず
よくぞここまできたものである。

Faccebookに写真を撮って載せる。

私は彼が成長する途中から
彼のような自分の中に身に余るエナジーを抱える子どもは
いろいろな大人に触れ、育ててもらうことが
必要だと思うようになっていた。

たくさんのコメントに
私の先輩、友人たち皆にお世話になったことを
今さらながらに思う。
ありがとうございました。

昼、2人して自転車でスーパーへ。
カスレという南仏の豆料理
平打ちのパスタ、サラダ。
シャンパンではなくクラシックコーラとCCレモン。

カスレは、煮込んだ白インゲンの上に
鳥肉やソーセージをのせた、汁なしシチューのような料理。

期せずして全体に茶色い食卓に。

豆ばかり多く、なんだかもそもそする。

2人それぞれブラックペッパーや、
マリーシャープスなどで
味を調える。

夜は近くのケバブ屋に行く予定だったが
私は仕事のち、机の上でクッション弾いて、突っ伏し寝。
Yくんも作業しているうちに、やはり寝。

ということで、夜ご飯はうやむやに。

起き出してハーゲンダッツ食べる。

ハーゲンダッツは、今までドイツあたりの会社だろうと思っていたのだが
アメリカのメーカーであった。

名前も
アイスといえば酪農の匡デンマークっぽいからと
コペンハーゲンのハーゲンに
それっぽい語感でダッツをくっつけただけと知り
2人であぜんとする。




2013年12月22日日曜日

ガツぽん・シフォンケーキ

ブルース婦人部忘年会。

恵比寿と代官山の間にある
えびす海岸という店。

8人集まる。

急な階段を上がったところにある
畳の部屋にあげてもらった。

古い家を使っているのか
少しすきまの空いた木枠の窓。
駒沢通りを大型が通るたび揺れる。

6時から、よく食べ、よく飲んだ。
ボビー・ブランドを偲ぶ会の後に入ったお店だったが
お通しの段階から、すこぶる美味しい。


私は最初にビール。
そのあと日本酒にする。

宮城の地酒ありますか。
いづみや思いのメンバー。

熱燗くださいと頼むと
いま冷やばかりなのでと、結局、白鹿になる。

ハクシカ。
なんだか、なつかしく、そして庶民の宴というムードが。

よいよい。
雑誌で仕入れただけの知識をひけらかし
注文する輩にはなりたくない。

最近、みえさん、“おっとな~”的なことを言われる場合もあるのだが
いや、どうも冷たいモノ、炭酸のモノを飲みすぎるのが
ダメだと気づいたのだ。
ときに低血糖になり、世の中がぐるんぐるん回り出す。
その点、熱いお酒は自分のペースを保ち、少しずつ飲める。

とは言え、序盤から調子にのって飲み始めたため
今回は途中から、ピッチャーから水ばかり飲んでいた。

とにかくよく食べ、よく飲み、よく笑った。

ソウル餅つき、ソウル豆まきって、なにさ。

実は私はメニューを見ながら
その店のスイーツとやらが
いつも気になっていた。

しかし、ぐいぐい飲みが入っている段階で
そんなものをオーダーするのは
場に水をさすようで気が引けていたのである。

が、昨夜は、壁の貼り紙からどうしても目を離すことができず
「シフォンケーキ食べたい!」
とリクエストを出してしまった。

これがまた美味しかった。ケーキも傍らのバニラアイスも。

皆も分けて食べる。

シフォンケーキ食べ、アイス食べ
がつポン酢も食べ、ちょっと日本酒も口にする。

好きなモノ食べて、好きなモノ飲んで、気の置けない友だちと、好きな音楽の話をする。

忘年会シーズンなので場合によっては2時間半で・・・と言われていたが
結局6時から5時間。

お支払いが1人7000円だったのには
ちょっと驚いたが
いい夜でした。