2014年5月1日木曜日

実家に帰る

タジ・マハールの『An Evening of Acoustic Music』
を聞きながら、実家に帰る。電車でおよそ1時間半。

アルバムは「スタッガ・リー」で始まる。
93年10月、ドイツはブレーメンでのライヴ。ほとんど弾き語り。
で、ほとんどでない部分に入っているピアノやチューバ、バンジョーが
これまたよい。

ジャケットも凝っている。
彼の中ではあまり話題にならないアルバムだけど
電車に揺られながら、うつらうつらする身体にも
しっかりと入ってくる歌、そしてギター。




私はタジ・マハールが大好きだ。
余談だが、インドの白いあれは、カタカナでタージ・マハルと書くらしい。

家に帰っても何をするわけではない。
ほぼ1日じゅう、大きな音でテレビがなっている。

80いくつになる母が元気そうでほっとする。

母にはあと何回会えるのだろう。
私はいつまで、娘としてふるまえるのだろう。
帰るとき、これが最後にならなければいいなあといつも思う。

あとは弟のF彦くんと、工場のネコたちと。
F彦くんとは、音楽談義、および工場の仕事談義。

車の中で、バーバラ・リンのジャパン・ライヴを聞いて
あの頃の話に花を咲かせる。

週一回、母を病院に送るため嫁いでいる妹のRちゃんも来る。
Rちゃん、ケーキを買ってくる。
Rちゃんとは化粧談義。インテリアの仕事談義。
実家にはなぜ食べ物がいっぱいあるのだろう。

私は箱入り娘だと誰かが言った。

家にいつも引っ張られてこの年齢になってしまった気はする。

映画でも家族ものにはからきし弱い。

オズの魔法使いの映画の最後で
「やっぱりお家が一番だわ」
というセリフを聞いたとたん、涙があふれて往生したことがある。

そんな家をつくれなかったわたし。

基本的に実家には過去しかない。
あのころのままだけれど
あのころのままではないと思いながら
帰りの電車ではまたタジ・マハールを聞いた。




2014年4月27日日曜日

マッスル・ショールズの映画 7月公開

『黄金のメロディ~マッスル・ショールズ』の試写が始まっています。

今回は試写会ではなく、
ライター陣で集まり、ブルーレイを観ました。

アレサ・フランクリン、クラレンス・カーター、キャンディ・ステイトン、
ジミー・クリフ、エタ・ジェイムズ、ウィルスン・ピケット、
ダン・ペン、スプーナー・オールダム、
さらにミック・ジャガー、キース・リチャーズ、
スティーヴ・ウィンウッド(トラフィック)
レーナード・スキナード、デュエイン・オールマン
といったミュージシャンに加え、モータウンのジェリー・ウェクスラーなども次々に。
サザン・ロックだ、ブリティッシュ・ロックだ、サザン・ソウルだ、モータウンだ
・・・といったジャンルを超えて、
世界のミュージシャンを引き寄せたスタジオ、マッスル・ショールズ。
テネシー川のほとりにある
アラバマの大自然に囲まれたスタジオの風景を通じて、
駆け足ながら、60~70年代の音楽シーンの横串を
可視化することができました。


■マッスル・ショールズとは

マッスル・ショールズは、アラバマ州の北部にある町の名前。
1950年代の終わりごろ、リック・ホールは
友人と共同でフェイム・スタジオを興しました。

その後、彼はプロデューサーとして製作に携わり
フェイム・レーベルなどから作品を世に送り出しました。
その後、アトランティックのジェリー・ウェクスラーや
チェス、キャピトルとも手を組み、たくさんの作品を送り出しています。

後に、マッスル・ショールズ・リズム・セクション(スワンパーズ)は
ウェクスラーに引き抜かれる形で独立。
マッスル・ショールズ・スタジオで
ロック系のアーティストの作品も多く手掛けました。

またこのスワンパーズと入れ替わる形で
サザン・ソウル・ファンに人気のフェイム・ギャングが
サポートを務めるようになっていきます。

しかし、作品の中心はあくまでホールやスワンパーズであり
フェイム・ギャングのシーンは少し。

そういう意味では、どっぷりソウルを聴かれている方には
食い足りないところがあるかもしれません。

実際、ストーンズやオールマンといった
ロック・ミュージシャンの口からでなく
ブラック・ミュージックを語るような映画はできないのかという意見もあります。

でも、私にとっては、
ジャンルという境界線など
見えないラインだったと
改めて気づかさせてくれる映画でした。

「ダンス天国」なら知ってる!
といったロックファンにもぜひお勧めしたい作品です。

乱暴な言い方になりますが、

白人のにいちゃんたち=スワンパーズが、
あんなファンキーな演奏をしていたことに
改めて驚く人もいるでしょう。

映像を観ながら、おや、これは私が70年代に体験した“あの音”だと
ふと感じる場面がいくつか。

そう、キャラメル・ママ(ティンパンアレイ)は
マッスル・ショールズ・リズム・セクションを意識していたと
以前、ドラマーの林立夫さんが語っていた。

音そのものが直結していたわけではないが
私に直感的にファンキーを教えてくれた
彼らの音には、マッスル・ショールズも溶け込んでいたにちがいない。


林立夫さんインタビュー(キリンラガー音楽酒場)
http://e-days.cc/musicbar/musicman/hayashi.html


■リック・ホールという男が人生を賭けたもの

しかし、全体を貫くのは、
マッスル・ショールズの地に
スタジオを興した
リック・ホールその人の思い、生き方です。

一緒に鑑賞していた人の中から、
「頑固一徹、中小企業を興したオヤジの一代記だな」
といった感想もありましたが、まさにそんな風情も。


ネタバレしない程度に書きますが、
ウィルスン・ピケットのワルそうな感じが際立っていました(笑)。
あと、男性陣からは、アリシア・キーズがキレイだとしきりに。

キレイなだけじゃなく
クワイヤをバックにしたアリシアの「プレッシング・オン」は
予想以上によかった。

キャンディ・ステイトンのレコーディング・シーンは
今度出る新作ですね。

昔の栄光ではなく、ちゃんと今に続いている。
そこがまたこの映画の素晴らしいところです。

■南部アラバマ

そしてなんといっても、「スウィートホームアラバマ」。

スワンプ・ロックの地でもありますから
ある程度想像はしていましたが、アラバマのど田舎っぷりには驚かされました。

翻訳家のアライさんによれば
この曲「スウィートホームアラバマ」と、レーナード・スキナード「フリーバード」の
人気には凄まじいものがあるそうです。

そしてマッスル・ショールズのマッスルは、筋肉のマッスル。
洪水や水害に負けないぞという意味があるんだとか。

またアラバマといえば、公民権運動の時代に
激しい人種差別で知られた町でした。
このあたりも事前に知っていると
なおのこと映画の世界に深く触れることができるでしょう。

ということで、7月公開をお楽しみに!



黄金のメロディ~マッスル・ショールズ~

7月より新宿シネマカリテほか全国順次上映予定
http://www.magpictures.com/muscleshoals/


オフィシャルトレイラー
http://youtu.be/FNGtfpim0OM