キャミソールの上にブラウスを着て
よれよれのズボンを脱いで放り、スカートを履く。
上に羽織るのは無難にジャケットでいいだろう。
鏡を見るとごく平凡な五十女が映っている。
いやごく平凡には違いないのだが
グレーのスカートに無地のジャケット。
あまりに無機質ではないか。
ジャケットを少しカジュアルなものにかえてみる。
役所で仕事だ。
自分とは一番遠いところにあると思っていた場所での
仕事をして10年あまりになる。
人に恵まれているが
やはり窮屈に感じることは多い。
若いころ、ある会社に連れられて行ったが
ドアをあけただけで違和感を感じ
むかむかしたことがあった。
今はだいぶ耐性もついたが
役場のようなところで一生を過ごすだけの我慢は
無理だなあと思う場面が多い。
我慢しなかったから今窮しているのだろうと
人は言うだろうか。
やりたいことをやろう、と改めて思う。
窮しても後悔するより、よいではないか。
逃げるのではない。
今いるこの場所だけがすべてではない、ということに
気づくことが大事なのだ。
役所を出てヘッドフォンを耳にさす。
脳みそに役所言葉以外の言語と響を流し込む。
ゴトウゆうぞうさんの歌声が聞こえる。
一般には、ブルース&ソウルカーニバルの司会者として
有名かもしれないが
ゆうぞうさんは、イマジネーションにあふれ
実にアーティストとして豊かな人だ。
ブルース、フォーク、ロック、沖縄民謡
呼び名はなんでもよいが
日本のルーツミュージックの継承者の一人であると信じている。
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