仕事場の冷たい床にさぶとん一枚枕にして横になると
驚くほど、深い眠りに堕ちることがある。
この日も季節はずれの暑さを疎ましく思いながらも
サッシ戸一つ向こうの晴れやかな日ざしを感じつつ
横になった。
どのくらい経ったか。
夢は見ていたと思う。
目をあけると、
目の前に乱雑に並んだ大小の本が並ぶ本棚がある。
どこなのかもよくわからなかった。
窓の外は薄明るい。
まだ暮れてはいないようだ。
あぁ、なんだ私の部屋じゃないか。
気がついて、身体を起こす。
五十肩だか腱板損傷だかで左肩を痛めているので
そちらをつかないように。
寝たというより、気を失っていたに近い。
最近、夜中でもあぁよく寝たと思い、時計を見ると
1時間ほどしか経っておらずがっかりすることがある。
床で寝るのは苦にならない。
裸足も好きだ。
スリッパをはかない、と言って友人に笑われるが
家にはスリッパなどという文化はなかった。
母や妹は「おねえさん、スリッパ!」
と他の家にお邪魔したとき私をたしなめるが
生まれてこのかた、足もとに意識がいってなかったのだから
なかなか治らない。
一度アスファルトに転がってみたいなと思う。
工事の人が昼休みに、日向をさけて
ごろりと身体を横たえているのが
なんともいえぬ休息に見える。
働いている人はいたしかたなくだろうから
薄っぺらなあこがれは申し訳ないが
あすこに横たわったとき、一体何が見えるのだろう。
弟も工場の昼休みに、アスファルトではないが
そこいらで昼寝をしている。
しばしの休息である。
ビッグ・ジョー・ウィリアムズは、旅の途中、宿もなく
ギターケースだかを枕に、道に横たわったという。
大事なギターやいくばくかの荷物は
盗られては一大事。身から少しでも離すわけにはいかない。
気の休まるどころではなかったかもしれないが
しばしの休息をとったのだ。
石に枕し流れに漱ぐ。
いまだ私の身体ではとらえきれない感覚。
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