◆行列 ソウルフード
後ろ髪をひかれながら教会を後にし、
お昼ごはんは、はす向かいのAMY RUTH'Sへ。
ガイドブックにも載ってるソウル・フード・レストランである。
http://www.amyruthsharlem.com/
しかしっ。
ここも観光客で行列なのだ。
肌の黒い若い女性がいるのでジモティかと思えば
ガイドブックをめくる、他の州から来た人だったり。
入口で、名前を告げてしばし待つ。
うっかり「senoo」とスペルを告げてしまったため
「エヌー」「エヌー」と呼ばれてしまう。
エイミー・ルースは、オーナー、カール・レディングさんの
祖母の名前。
10人の子どもと12人の孫を持つ敬虔なクリスチャンのエイミーはアラバマ出身。
夏になると子どもたちには、それぞれ雑用が与えられたのだが
カールさんは、芝刈りとか畑仕事ではなく
台所でおいしい料理をこしらえる
エイミーおばあちゃんの傍にいるのが好きだった。
おじいちゃんに台所から追い出されても追い出されても
台所にいたおかげで、カールさんはおばあちゃん譲りの
おいしい南部料理のレシピを自分のものにすることができたのだとか。
メニューには、有名人やゆかりのある人の名前がついている。
うーん、絶対にヘヴィになるとはわかっているけど、
ここは、ナマズ、でしょう。
それと、看板メニューのワッフル。
ワッフルはおいしかったなぁ。
マス目の一つ一つにバターを落として食べたいなぁ。
特にメープル・シロップとの相性が抜群でした。
前菜?のもっちりしたケーキで すでにおなかがふくらむ |
ワッフルの上で寝転ぶキャットフィッシュのフライ |
チキン、サラダ、ライス! President Obamaなんちゃらという名前だけで選んじゃったらこの量だ |
しかし、ワッフルの上に揚げモノという大雑把な組み合わせに対し
日本人のおなかは、受入体制ができていない・・・
隣のおねえさんは、フルーツのせをチョイスしていたが
「この上にチョコレートシロップをかけたいの~」
と、お店の人を呼んでオーダーしていた。
気は心、食は文化!とばかりに
胃袋に無理を言って、オーダーしてしまうのだが
もともと食は細い、胃腸も弱ければ、お酒にも弱い。
日本食が恋しいなんてことはない代わり
海外で一番つらいのはここんとこだ。
◆懺悔の日曜日、午後のハーレム
マルコムXブルバードを歩く。
マルカムXが建てたマスジッド=マルカム=シャバズ メアリー・J・ブライジが今度映画で彼の妻を演じるらしい |
日曜の昼下がり。
天気もよく
どことなく、のんびりした雰囲気だ。
Stormy Monday風に考えれば
1週間分の邪心を懺悔し終え
何もかもちゃらになった
心も軽く、身も軽いひとときなのだろう。
たとえ明日がまた嵐の月曜日でも。
今日は今日。
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黒人として初めて下院議員になり 公民権運動に力を尽くした アダムパウエルJr.像の 颯爽とした後ろ姿 |
クレイトン・アダムパウエルJr.像の建つアフリカン・スクエアを見下ろすように建つひときわ高いビル。
ここには、かつてクリントン元大統領がオフィスを構えたことで、全米をびっくりさせた。
最初に耳にしたときは、マイノリティのいる地域にわざわざ・・と美談を想像したのだが
実際には、マンハッタン中心部の家賃が高騰したため、税金の無駄遣いにならぬよう、ハーレムを選んだ、ということらしい。
この日、広場に設営された舞台では、
男が油を摂取しすクぎるといかに身体に悪いのか、オーガニックの重要性について熱弁をふるっていた。
舞台の前に並べられた椅子に、ぱらぱらと座った(主に)おじさんたちは、
話になるほどと感心したときも、
少し退屈なときも、少しお尻を動かして反応する。
そもそもハーレムは、1873年にマンハッタンに併合され白人向けの高級住宅街として発展したエリアだ。
しかしその計画が頓挫したために
貧しいアフリカン・アメリカンが急速に流入。
ある統計によれば1930年には、その7割がアフリカン・アメリカンだったとも言われる。
そう思えば確かに、私のようなものが物見遊山で訪れるハーレムは、あの頃のハーレムではないのだろう。
でもすれ違う人の肌は、圧倒的に黒い。
そしてそれも一様ではなく
服装だけ見てもアフリカン、ラティーノ、カリビアンなど
多様な文化の集合体がこのハーレムなのかもしれない。
父の日でどの店もDAD攻勢 |
スティーヴィー・ワンダーの流れるスタバでは
近所のおじさんやおばさんらしき人たちが、ひと休みしながら、なんとない話に興じていたし、
同じH&Mでも、ハーレムのH&Mは
派手なストライプのワンピースをはじめ
色味が強い気がした。
ヒップホップなTシャツを売るあんちゃん、隣は
バッグ。
道端にはいろんなベンダーが並ぶ。
往年のソウル・ミュージックを流すおねえさんの台には、所狭しとCDが並んでいるが、ジャケットはない。白盤ばかりだ。
◆ハーレムの本屋さん
目抜き通りの一等地に空き地があった |
黒人の作家や、黒人文化の書籍を扱う「Hue-Man Bookstore & Cafe」をのぞいてみた。
http://www.huemanbookstore.com/
珈琲の香りがするカウンターでは
なじみのお客さんなのだろうか。
店の人と静かに世間話をしている。
失礼ながら予想していたイメージと違い
表の喧噪とは裏腹に
とても落ち着いた感じの本屋さんだ。
音楽のめぼしい本は見つからなかったが
絵本には興味をひくものがいくつかあった。
ハーレムが変わろうとするからこそなのか。
誇りや文化を子どもたちに伝えていこうとする
人たちがここにもいる。
しかし、先日、サイトを見たら、本屋さんは7月末で
閉店してしまうらしい。
こうした書店もやはり、やっていくのは難しいのだろうか。
◆ハーレムで自転車大会
ぶらぶら歩いていたら、マイクであおり立てるようなMCが聞こえてきた。
声のする方を見ると、アパートとアパートの間の道をふさいで
何かやっている。自転車のアクロバットだ。
この日は、<Harlem skyscraper Cycling Classic>が開かれ、周囲はちょっとしたお祭り会場。
後で調べたら、子どもからプロまで参加しての大がかりな大会だった。
もっとも、私が専ら楽しんだのは、さっきからヒップホップにのせた派手なマイク・パフォーマンスが住宅にこだまする、BMXでのスタント・ショーの方。
成功しても、失敗しても、顔を見合わせ、ハイタッチして、お互いを讃えあうメンバーの顔がすごくいい。
バンドでも、スポーツでも
こういうチーム・プレイのアイ・コンタクトにしびれる。
あ、この人たち、信頼しあってんな!~という瞬間を目撃するのが好きなのだ。
その感覚をこうしてハーレムの風景の中で味わえたのがとてもうれしい。
アクロバットが決まるたび、まるで我が子が出場するパフォーマンスを見るかのように歓声をあげ、拍手し、笑った。
ハーレムだ!ブラック・ミュージックだ!と
最初ははしゃいでいたけど、
歩けば歩くほど、私は街の表面をなぞって通り過ぎる、ただの観光客になっていく。
ぺらっぺらな自分に焦っていたからこそ、
風景の中に確かに存在する感覚が楽しかった。
ハーレムに、もう一度戻りたい風景ができた。
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