2011年5月2日月曜日

スカイツリーが見張っている 浅草雑記

●4月30日


渋谷のデモを気にしつつも
友人と待ち合わせする浅草・雷門に向かう。
渋谷からは銀座線だ。

30分ばかりも乗るので、仕事のメモをとったり
本を読んだりすることにする。

隣に座っている女性は、
ケータイでメールを打ちながら、
私の世界に入り込むなとばかりに
隣り合った腕に力をいれている。
髪のかぶさった顔だけでは
若いのか若くないのかよくわからない。
いつか隣にうざいおばさんがいると
メールの相手に告げ口するのではないかと
やきもきする。

地下鉄が終点をしらせ、ホームにおりると
あぁ、この臭い、浅草だ。




いっとき、観光客激減と聞いていたが、地下鉄を外に出る階段には
ぞろぞろぞろぞろと若いのも足のおぼつかない者も列をなしている。
あら、これは今日は何か催しでもあるのか。
へんな日に来てしまったかと後悔するが、
表へ出たらただ単に人の出が多いだけだった。

道の端に人力車が並んで客を引いている。
たまに見ると珍しくてよかったが
ここまで増えると、気恥ずかしい。

音楽好きの仲間らしく
雷門の前から、音のヨーロー堂をめぐり
マルベル堂を冷やかしてから、浅草寺にお参りした。

大正時代からここにあるヨーロー堂は
「CDじゃだめなのよ~。カセットはないかしら」
とおばちゃんが言ってるような店だ。
演歌だけじゃなく
国内バンドのCDもあって、たまにだが来るたびに
軽いショックを受ける。

世の中では本当にいろんな人たちが活動し、CDを出しているのだなぁと
へぇ~、やぁ~~、などと驚いてばかりいた。
ハジから買ってしまいそうだったので
今日は見るだけにする。

マルベル堂では、ジャクソン5の絵はがきを買った。
「高田みづえがさぁ、知ってるだろ、お相撲さんと結婚したぁ、大田裕美はさぁ・・」
などと、店の中で大きな声で、見つけたそばから
連れに、どうでもいい情報を解説している男がいる。
ちらと見たら、案外、若い。
連れにというより、店中に、知っていることを自慢したいのだ。

店を出て、行く先を見上げたら
アーケードの向こうから、スカイツリーがのぞき込んでいた。
わっ!とはしゃいでカメラを向けたけど
おっかないなぁとも思う。
もう浅草の風景はスカイツリーから逃れられないのだ。

              




















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観音さまにお参りして、スマートボールをやりたいという友人の提案に従い
ローラーコースターの轟く音と一緒に
きゃー、きゃーと、一定の間隔で歓声が聞こえる
花やしきの横を、ふらふらと歩いた。



死んだ父親が歩いたら、浅草も変わったねぇとつぶやくだろうが
それでも、ここの町には、変わりようがないところが多い。

いったい、1日に何着売れるんだと思われるシャツを売ってたり
天ぷらを食べさせるだけにしては、こってり仰々しい看板があったり
映画館には任侠者のでっかい映画のポスターが貼ってある。
缶チューハイを手にしたおじさんが、えらい機嫌よさそうに
脇を通り抜けていく。

楽しい。
楽しいのは、まるごと、現実味がないからかもしれない。
観音さまに手を合わせるとき以外は
現実逃避を許しているようにも思える。

意外に若い人が多いのもそのせいだろうか。
きっとある年齢より上の世代は
もうさんざん浅草には来たので、たくさんなのだ。






むかし、にこみ通り、今、ホッピー通りと呼ばれてる
外飲みのできる一画で夕方明るいうちから飲んだ。
通りに面した小さなテーブルをパイプ椅子で囲んで
コンビーフを煮込んだような牛の煮込みとか
イカのピリ辛炒めなどを食べる。

おねえさんたちが必死に客を呼び込んでいる。
どこからどこまでが隣の店なのかよくわからない。
向かいの店の前で、ビールケースを裏返してつまみを並べ
一杯やり始めたグループのところで
こっち側にいた化粧の濃いママが、オーダーをとっている。

仕事でもなく、明るいうちから
どうということもない話をして飲むのはこれまた楽しい。
でも、浅草のような気もするし、どこかほかの街のような気もする。



              

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それにしても、
相変わらず、ふいに顔をあげると
スカイツリーに見張られている。

吾妻橋のところからもよく見えるが
アサヒビールのおかしな建物があるせいで
威圧感は、いくぶん帳消しになる。




風水には全く疎いが
皇居の北東に建つ、
江戸の外、川向こうにできたあの塔は
結界を破る建物なのか、それとも新たな結界なのか。
よくわからないが
空を変えたのは確かだと思う。

小さいころ、浅草にきたら
観音さま、花やしき、天ぷらの葵丸新と、コースは決まっていた。
浅草観光とは、街の中の巡礼なのだ。

今度は、一人を引き受け、町の中を
ぶらぶらとめぐろう。
飽きるまで隅田川を眺めよう。

その時は、きっと
一人じゃなく、
今度はだれかと来たいと思うのだろう。
堂々めぐりだ。
でも
辻褄の合わないところ、
それもまた旅なのである。

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